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Beautiful day
I can ( not ) say it.  / エヴァ 加持ミサ
2009/09/16 11:45

以下の作品は新世紀エヴァンゲリオンの加持リョウジ×葛城ミサトの二次創作小説です。
読み手を選ぶと思いますので以下の注意事項を確認の上ご覧ください。

< 注 意 >

・貞エヴァの性格・背景の二人
・一応大学時代
・加持さん視点
・ぶっちゃけただ悩んでるだけ
・小説というより掌編の短さ
・何か鬱っぽいようなそうでもないような







 彼女は眠りに付く際、よく酷く魘される。
 瞳をきつく閉ざして声にならない悲鳴をあげて、掛け布団を必死に握り締めて何かと戦っている。
 その姿が痛ましく、何度も何度も呼びかけて夜中だというのに彼女を起こす。
 現実に引き戻された彼女の瞳は定まっていないでぼんやりと虚ろな瞳をしている。そうして、いつも同じように涙を零すのだ。

「……かじくん……」
「大丈夫だ。……ここにいる」

 彼女の細い手が、縋るようにして身体を這う。彼女は俺を見ていないことは分かっていた。
 それでも、何かしたくて、どうにかしたくて、彼女の頬に口付ける。応えるように回していた腕の力を彼女は益々強めるのだ。
 明日の授業も一限からだというのに、懲りもせずに彼女を抱く。恐らくは明日も寝不足で彼女の友人にどやされるのだろう。
 けれど、それも悪くないと思っている自分が居てどこか可笑しかった。

「葛城」

 咽喉まで出かかった言葉を慌てて飲み込む。悪夢に魘されていた彼女にこの言葉を言うのは、聊か卑怯だと自身を叱責する。
 伝えたかった言葉は――彼女が俺の奥に居る「何か」ではなく俺を見たときに伝えよう。
 そうしなければフェアではない。俺はそう言い聞かせて、彼女の首筋に小さな花を咲かせる。
 女に溺れるのも悪くはない。自分の背負う業を見ない振りをして、全てを捨てて快楽に溺れようと彼女を再び抱きしめた。

 彼女の肉体も、彼女の精神も、俺の何かと溶け合い、そして落ちていく。実に刹那的だが、決して永遠に一つにはなれないそれが重なり、一つになることは悪いことではない。
 人間は、理性を失えば常時発情できる唯の獣だ。獣は逆に理性がないから発情できる期間が定まっている。
 じゃあ、俺はと己に問いかけた。
 自分が「人」であるのか「獣」であるのか、それともそれらどちらすらないのか。
 腕の中で眠る彼女は、どちらだろうか。不意によぎった疑問。答えは一つだった。彼女は「オンナ」、自分は「オトコ」であり、「人」であるからこんなにも業を背負い悩み苦しんでいるのだろう。
 そのことに気付いた時、世界が反転し闇に捉えられた気がした。逃れようと足をばたつかせても、闇はゆっくりと足に絡みつき離さない。
 恐怖に顔が歪んだが、それでも己の腕にもたれかかる彼女の重みで「現実」を保っていられた。ごくりと小さく咽喉が鳴る。

「――忘れちゃ、ないさ」

 女に溺れて目的を見失ってないかと時折、彼らは現れて俺に問う。そのたびに俺は自嘲して応えるのだ。大丈夫。忘れていない、そのためだけに今生きているのだと。
 彼女も、“同じ” だ。俺を見ているようで、別の誰かを見ている。そして俺もまた――彼女を見ているはずなのに何か違うところを見ている。
 だから惹かれ合ったのだろう。磁力のような何かに導かれたのだと今でも思う。無論言葉にすれば彼女は呆れた口調で「馬鹿言ってんじゃないわよ」とでもいうのだろうけれど。

 恐怖に顔を青くして、何度も何度も同じ夢を見る彼女を抱き寄せて眠る。
 彼女の見る夢が、今度は暖かいものであるようにと願うのだ。何度も、何度も。
 それでも彼女が魘されるから、夢など見させない程に身体を抱く。

 彼女に此方を見て欲しい思うのと同時に、俺の内面部分に存在する穢れた部分を見ないで欲しいという矛盾。穢れた部分も含めて彼女になら見せてもいいのではないかという葛藤。

「―― 葛城」

 言葉にすれば、何かが変わる気がした。そんな筈がないのに、寧ろ言葉にとらわれてしまうのに。
 思うことすら罪であるのに――それでも俺は想うことを止められない。
 腕の中で小さく動いた彼女が寝ていることを確かめて、目を閉ざす。言えなかった先ほどの言葉が文字になって、目を閉じた自分の視界に金色の明朝体になって現れる。
 それが見たくなくて、目を開き、再び今度は身体が疲れて悲鳴を上げているから――目を閉じた。

 どうか、彼女の見る夢が、俺とは違う幸せな夢であるように。
 薄れゆく記憶の中で、そう、願った。


――
 某所に小話として投下したものを加筆修正。

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